クアラルンプール→ロンドン→プラハ→ウィーン→ヴェネツィア→バルセロナ。6都市を渡ったこの旅の記録は、こちらのルート記事にまとめている。
6都市のうち、ロンドン・ヴェネチア・バルセロナの3都市、合計7泊は意識してヒルトン系列を選び続けた。だが「ヒルトン系列」とひとくくりにしても、実際に泊まった宿の顔ぶれは一様ではない。Hampton by Hilton、Curio Collection by Hilton、Hilton Garden Inn、Tapestry Collection by Hilton。4つの異なるサブブランドに、期せずしてきれいに分かれて泊まることになった。
同じヒルトン・オナーズのゴールドステータスを持っていても、サブブランドが違えば効き方も違う。この記事は、都市ごとの旅の記録ではなく、その「効き方の違い」を軸に書く。
前提として書いておくと、7泊のうち予約段階で選んでいたのは、判明している限りすべて各ホテルの最も基本的なゲストルームだった。唯一の例外がCurio Collectionの2軒、GantryとWestminsterで、どちらもアップグレードを受けていた。つまりこの記事は「サブブランドごとにどんな部屋が待っていたか」ではなく、「同じ条件(最安室)で予約して、結果がどう分かれたか」の記録でもある。
7泊の内訳
| 都市 | 宿泊順 | ホテル | サブブランド |
|---|---|---|---|
| ロンドン | 1泊目 | Hampton by Hilton London Waterloo | Hampton by Hilton |
| ロンドン | 2泊目 | The Gantry London, Curio Collection by Hilton | Curio Collection |
| ロンドン | 3泊目 | The Westminster London, Curio Collection by Hilton | Curio Collection |
| ヴェネチア | 1泊目 | ヒルトン・ガーデン・イン・パドヴァ・シティセンター | Hilton Garden Inn |
| ヴェネチア | 2泊目 | ヒルトン・ガーデン・イン・ベニス・メストレ | Hilton Garden Inn |
| バルセロナ | 1泊目 | ハンプトン・バイ・ヒルトン・バルセロナ・フィラ・グラン・ビア | Hampton by Hilton |
| バルセロナ | 2泊目 | ホテル・ビア・サンツ・バルセロナ | Tapestry Collection |
サブブランドごとのゴールド特典の違い
宿泊前に確認できるヒルトン・オナーズの会員特典ページを見ると、そもそもサブブランドによって用意されている特典の中身が違うことが分かる。
| サブブランド | 選べる特典 | ゴールド会員への追加特典 |
|---|---|---|
| Hampton by Hilton | ボトルウォーター1本+スナック1個 / 250ポイント | なし |
| Hilton Garden Inn | 毎日の飲食クレジット(米国外は無料の朝食) / 750ポイント | なし |
| Curio Collection by Hilton | 毎日の飲食クレジット(米国外は無料の朝食) / 1,000ポイント | 空室状況に応じたプリファードルームへのアップグレード |
| Tapestry Collection by Hilton | 毎日の飲食クレジット(米国外は無料の朝食) / 1,000ポイント | 空室状況に応じたプリファードルームへのアップグレード |
Hampton by HiltonとHilton Garden Innには、公式に保証された特典としてはアップグレードが含まれていない。アップグレードが特典として明記されているのは、Curio CollectionとTapestry Collectionの2ブランドだけだ。そのうち今回実際にアップグレードが実現したのはCurio Collectionの2軒(GantryとWestminster)で、同じく特典の対象であるはずのTapestry Collection(Via Sants)では実現しなかった。
ただし、これはあくまで公式ページ上の「保証された特典」の話だ。現場の裁量によるアップグレードが起きないわけではない。実際、カナダ横断の旅で泊まったヒルトン・ガーデン・イン・トロント・バーリントンでは、ジェットバス付きの広い部屋への無料アップグレードを経験している。公式特典に含まれていないHilton Garden Innでも、現場の判断でアップグレードは起こり得る——今回のヴェネチア2軒でそれが起きなかった、というのが正確な言い方になる。
Hampton by Hilton|迷いのない「型」の心地よさ

ロンドンの初日はHampton by Hilton London Waterloo。ウォータールー駅から近く、動線が読みやすい。予約していたのはクイーンベッド1台の最も基本的な客室で、広さは20平米ほど。白いベッドリネンと、バスタブ・トイレが独立したバスルーム、デスクとテレビだけの、装飾を削ぎ落とした部屋だった。チェックインの際にはMyWay特典でスナックとドリンクを選べた。フロントに並んだ選択肢からTyrellsのポテトチップスとOranginaを選び、部屋へ持ち込む。それだけのことだが、着いてすぐ買い出しに出るという選択肢が消える。荷物を下ろして、そのままソファに座れる。長距離移動後の体には、この「何もしなくていい時間」が一番効く。
バルセロナでも、初日の宿はハンプトン・バイ・ヒルトン・バルセロナ・フィラ・グラン・ビアだった。ここも同じく最も基本的な客室で、ベッド脇にBillingham CANVAS 305を置くと、それだけで部屋の広さが分かるくらいのコンパクトさだった。デスクとテレビ、電気ケトルという最小限の設備は、ロンドンのウォータールーとほぼ同じ構成だ。メインの荷物であるBillingham CANVAS 305を部屋に置き、Brady AVONだけを提げて街へ出る。シャワーを浴びて一息つき、身軽な装備で夕方の街を歩き始める。この「着いてすぐ、迷わず動き出せる」感覚は、ロンドンのウォータールーと変わらない。

Hamptonに共通しているのは、劇的な演出よりも「型」の安定感だ。どの都市で泊まっても、同じ水準の心地よさが約束されている。その予測可能性そのものが、旅の負荷を減らしてくれる。
Curio Collection by Hilton|一軒ごとに違う顔をもつ「個性」の宿

ロンドン2泊目はThe Gantry London, Curio Collection by Hilton。ストラトフォード、Westfield Stratford Cityにほど近いホテルで、チェックインの際にアップグレードを受けていた。

床から天井までの窓の奥に、木目のヘッドボードを持つベッドが据えられ、壁には歯車のオブジェと懐中時計のアートが並ぶ。窓際のティール色のソファに、到着してすぐBillingham CANVAS 305とBrady AVONを並べて置いた。ブルーのパネル壁の奥には洗面台のあるバスルームが続き、手前には引き出しが3段になった造作があり、一番下はミニ冷蔵庫になっている。その上にドリップ器具とコーヒーマシンが並ぶコーヒーコーナーが設けられている。革ベルトの効いたヴィンテージ調のトランクが、もう一つの家具のように部屋の中に置かれている。

バスルームは黒白のヘキサゴンタイルの床に、コンクリート調の洗面台。丸い縁なしの鏡と、光る拡大鏡が並んで壁に取り付けられている。バスローブとスリッパは白いタオル地で統一され、シャワーブースには漆黒に近いアンバーガラスのアメニティボトルが3本並んでいた。
同じヒルトン系列とは思えないほど、Hamptonとは異なる体験だった。
3泊目に移ったThe Westminster London, Curio Collection by Hiltonでも、アップグレードを受けていた。ただしこちらは、チェックインを待たず事前にメールで通知が届いていた。何も申し出ることなく、宿泊日を待たずに部屋が変わることが分かっている。これはヒルトン・オナーズのゴールドステータスによるものだ。
予約していたのはこのホテルでも最も基本的なクイーンルーム(20平米ほど、2021年の改装後の内装)だったが、実際に案内された部屋は明らかにそれより広かった。入ってすぐの通路部分に、大理石天板のコーヒーコーナーが独立して設けられ、ネスプレッソマシンとケトル、カップが並ぶ。その奥には歩いて入れるクローゼットがあり、バスローブとデジタル式のセーフティボックス、荷物を広げられるベンチまで備わっていた。

寝室は深緑のヘッドボードに、”TW”のモノグラムが入った紺色の花柄クッションが重ねられ、窓際には同じ紺色の張り地のベンチが置かれている。

バスルームは黒い大理石調のタイルで統一され、レインシャワーの下に”TW”オリジナルのボディウォッシュとハンドウォッシュのボトルが並んでいた。予約段階で想定していた最も基本的な部屋との差は、こうして写真を見比べるだけでも一目瞭然だった。Savile Rowへ歩いて行ける立地で、英国紳士服の聖地に近い一軒に、予約より格上げされた状態で滞在できたことになる。
Curio Collectionは「均一な型」を持つHamptonとは対照的に、一軒ごとにまったく違う個性を持つ。Gantryは鉄道遺産の再生、Westminsterは伝統的な英国のホテルらしい佇まい。内装も立地もまったく異なる2軒だったが、アップグレードという結果だけは両方とも同じだった。
Hilton Garden Inn|「本島に泊まらない」を支えた拠点力

ヴェネチアでは、本島には泊まらなかった。1泊目はヒルトン・ガーデン・イン・パドヴァ・シティセンター、2泊目はヒルトン・ガーデン・イン・ベニス・メストレ。どちらも本島の外にあり、無数の橋と階段が続く街を荷物を持って歩き回るより、郊外に拠点を置いて身軽に通うためだ。
Hilton Garden Innというブランド自体、どの土地でも同じ水準の客室を用意することを謳っている。快適なベッド、コーヒーメーカー、書き物のできるデスクとチェア。パドヴァの客室も例外ではなく、壁には街並みを写した写真が飾られ、ベンチに旅の鞄を置くだけの、機能に徹した造りだった。予約していたのはここも最も基本的な客室で、アップグレードはなかった。朝食はゴールドステータスの特典で無料になった。朝食会場が開く前の時間だったので、先に旧市街を歩きに出た。人けのない石畳の路地に朝の光がまっすぐ差し込む時間を歩いてから、ホテルに戻って朝食をとった。

メストレの客室も、同じHilton Garden Innの標準的な造りだった。LCDテレビ、電気ケトル、冷蔵庫、セーフティボックス。パドヴァと同じ最も基本的な客室で、こちらもアップグレードはなかった。Billinghamをホテルに預け、Brady AVONひとつを肩にかけて本島へ発った。この旅でいちばん身軽になる瞬間だ。本島から戻ると、白いリネンが整えられたベッドの脇に、都市を渡ってきたBillinghamと、一日中肩にかけていたBrady AVONが並ぶ。
Hilton Garden Innに求めていたのは、演出や個性ではなく「拠点としての機能」だった。本島に泊まらないという選択そのものを支えたのが、この2軒だった。
Tapestry Collection by Hilton|個性派の一軒に泊まる

バルセロナ2泊目は、ホテル・ビア・サンツ・バルセロナ、タペストリー・コレクション・バイ・ヒルトン。サンツ駅から歩いてすぐという立地で、全50室というこぢんまりとした一軒だ。予約していたのは、ここも最も基本的な客室。上質な寝具とノートパソコン対応のセーフティボックスが備わった、小さいながらも清潔で機能的な部屋だった。本島を歩き倒した一日の終わりに、預けていたBillinghamを回収してチェックインした。この滞在ではアップグレードはなかった。
Tapestry Collectionにも本来はプリファードルームへのアップグレード特典が用意されているが、この滞在では実現しなかった。7泊のうち、アップグレードが確認できたのはCurio Collectionの2軒(GantryとWestminster)だけだった。残りの5泊は、部屋のグレードという分かりやすい恩恵こそなかったものの、チェックインの安心感や朝食の余白といった、もっと地味な部分で旅を支えていた。
サブブランドが変わっても、変わらなかったもの
4つのサブブランドに、すべて最も基本的な客室で泊まり比べてみて分かったのは、ゴールドステータスの恩恵は「毎回のアップグレード」という分かりやすい形だけでは測れないということだ。公式に保証された特典としてアップグレードが含まれるのはCurio CollectionとTapestry Collectionだけで、Hampton by HiltonとHilton Garden Innには含まれていない。ただしそれは公式の建前にすぎず、Hilton Garden Innでも現場の裁量でアップグレードが起きることはある。今回の7泊に限って言えば、実現したのはCurio Collectionの2軒(GantryとWestminster)だけで、同じ資格を持つはずのTapestry Collectionでは実現しなかった。
Hamptonの型の安定感、Curio Collectionの一軒ごとの個性、Hilton Garden Innの拠点としての機能、Tapestry Collectionの独立した佇まい。サブブランドごとに求めるものは違ったが、どの一軒でもチェックインの瞬間に迎えられる感覚だけは共通していた。カード1枚を持っているだけで、その安心感が旅の道中ずっと途切れなかったのは、記録しておく価値があると思う。
ヒルトン・オナーズ・アメックスについて詳しくは、以下にまとめている。
関連記事:旅の質は、出発前から決まっている。40代ソロを支える4枚のカード術
関連記事:スーツケースを持たない旅で、宿だけにはこだわりたい。ヒルトン系列に泊まり続けた国内6軒の記録


コメント