荷物を手放したのは、ある日突然の決断ではなかった。2016年のロンドンでは、買い物の戦利品を持ち帰るためにスーツケースを受託手荷物にした。2019年のセブ島では3ヶ月分の荷物でスーツケースが必要だった。コロナ禍の国内旅でスーツケースなしの身軽さを知り、2023年のゴールドコーストで海外でも通用すると気づいた。旅を重ねながら、じわじわとたどり着いた場所だった。
そうやってたどり着いた今のスタイルの中で、宿にもこだわった。2025年11月から2026年3月にかけて、意識してヒルトン系列を選び続けた結果、国内の宿泊は6軒になった。
なぜ、ヒルトン系列を選び続けるのか
大きな理由のひとつが、ヒルトン・オナーズ・アメックスを持っていると、ゴールドステータスが自動で付与されることだ。客室の無料アップグレード、朝食特典、そしてレイトチェックアウト。チェックインの瞬間から旅を変えてくれる。
もうひとつ、地味だが見逃せない理由がある。オーダーシャツを着ることが多いため、宿泊先でアイロンをかける必要が出てくる。ヒルトン系列は客室にアイロンとアイロン台が備え付けられていることが多く、この点が地味に助かっている。
このカードについて詳しくは、以下にまとめている。
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国内で泊まった6軒
①ダブルツリー東京有明
連休をとって東京に出かけた。有明を選んだのは、翌日に豊洲で寿司を食べに行きやすいという理由からだった。

チェックインで渡されるDoubleTree名物のウェルカムクッキーを受け取った。焼きたての温かさが手に伝わってくる。

客室からは、首都高と街並みの明かりが見える夜景が広がっていた。
有明のフィットネスジムには、TECHNOGYMのトレッドミルとダンベルラックが並んでいた。ダンベルの種類は少なめだったが、ケーブルマシンもあり、種目の幅は確保できていた。

翌朝はゴールド特典の朝食をとってからチェックアウトした。豊洲で寿司を食べ、その後表参道のフランセに寄った。平日限定のピスタチオ味のフランセパニエを選んだ。フランス産バターを薄い生地に何層にも重ね、表面をキャラメリゼした一品で、クリームがたっぷり詰まっている。サクサクとした食感を味わった。

②ダブルツリー富山
石川県に住む旅の弟子が少し前に入籍していた。ようやくタイミングが合い、祝いの食事をしに行くことにした。先にチェックインを済ませておこうとフロントに立つと、客室をアップグレードしていると告げられた。荷物を置いて少しのんびりしてから、待ち合わせの時間に合わせて金沢へ向かった。夜の食事を終え、富山へ戻って眠りについた。翌日は特に予定を入れず、富山に残って海鮮を食べながら過ごした。

有明よりも一回り広い部屋にアップグレードされた。ガラス張りの独立したバスルーム、丸テーブルと椅子のセット。想像以上に、ゆとりのある造りだった。
③ヒルトン横浜
年始の忙しさがひと段落した頃、前から気になっていた桜木町の鮨 浜はちの予約がようやく取れた。それだけを目当てに、横浜へ向かった。チェックインを済ませると、客室のアップグレードを告げられた。荷物を置いて身支度を整え、夕方に浜はちへ向かった。横浜本場市場の仲卸「浜八」が手掛ける店で、豊洲市場の買参権を持つだけあってネタの仕入れに一日の長がある。白木のカウンター8席のみ、赤酢の酢飯と有明海苔から始まるコースを、若手の職人が一品ずつ丁寧に握っていく。

横浜は、部屋そのものの広さで違いを感じた。独立したウォークインクローゼット、ソファ付きのシッティングエリア。窓の外にはみなとみらいのビル群が広がっている。

ジムも大きな窓に面していて、高層ビル群を眺めながらトレッドミルを使える造りだった。
④コンラッド東京
ヒルトン系列の中でも最高級ランクとされるコンラッドに、一度は泊まってみたいとずっと思っていた。ちょうど一区切りのタイミングと重なったこともあり、自分への労いを兼ねて予約した。到着してフロントで手続きを済ませると、上層階の部屋へのアップグレードが告げられた。

これまでの3軒とは、明らかに格が違った。寝室とガラス一枚でつながる開放的なバスタブ、TWG Teaのティーセット、Nespressoマシン。ミニバーには山崎やシバスリーガルまで並んでいた。バスタブの縁には「CONRAD TOKYO」と刻まれた王冠付きのアヒルが座っていて、細部まで気を抜いていないことが伝わってくる。


朝食は、東京湾を見下ろす窓際の席でとった。コンラッド東京の名物、濃厚なビスクソースが特徴の「ロブスターオムレツ」を頼んだ。窓の外では、朝焼けが空を淡い橙色に染めていた。


チェックアウト後、ロビーで季節の生け花に目が留まった。荒々しい枝ぶりと橙色の小花の対比が印象に残った。これに見送られながら、コンラッド東京を出発した。

⑤ダブルツリー京都駅前
昼過ぎにコンラッドをチェックアウトし、さてこの後どうしようかと歩きながら考えていた。そうだ、京都へ行こう。思い立って、そのまま京都へ向かった。京都駅では551蓬莱の豚まんとシュウマイ、赤福を買ってから、ダブルツリー京都駅前へ向かった。フロントで手続きを済ませると、ここでも客室のアップグレードが待っていた。久しぶりの関西ということもあり、晩ご飯はその豚まんとシュウマイで済ませた。赤福は翌日のお茶菓子にとっておいた。

梅の花をあしらった絵、和柄の花柄カーペット。京都らしい意匠が随所に効いている。
この朝食ビュッフェは、京都の食材を使ったジャパニーズステーション、卵料理をその場で仕上げるライブステーション、抹茶づくしのスイーツコーナーなど、和と洋を横断する構成になっている。数ある選択肢の中から、デザートにはぜんざいと抹茶のケーキ、ダブルツリー特製のワッフルを選んだ。蜂蜜をかけたワッフルは、しっかりとした甘さで満足感があった。

2泊目の夜は、何を食べようかとぶらぶら歩いた。


通りすがりのイタリアンの店に目が留まった。店構えの雰囲気だけで、直感的に入った。メニューには京鴨のローストがあり、イタリアンの中にも土地柄が表れていた。

⑥ダブルツリー富山(2回目)
これといった理由はなかった。なんとなく、また富山へ行くことにした。フロントに立つと、スタッフが前回の滞在を覚えていて、しばらく話が弾んだ。客室は今回もアップグレードされていた。
この滞在はホテルステイが中心だった。読みたかった本を読んだりしながらのんびり過ごし、夜には海の幸を食べに外へ出た。地元の寿司店で、握りと白子の天ぷらをいただいた。


珈琲を飲みにオールデイダイニングへ行き、コーヒーとケーキをいただいた。ホテルから出ることなく、こういうものが楽しめるというのは、それだけで満ち足りた気持ちになる。

3ヶ月半で6軒、そのうち5軒でアップグレードを受けている。有明だけはアップグレードの有無を覚えていないが、それを差し引いても、かなりの確率だと言っていい。
部屋のグレードだけではない。どの宿でも、スタッフの対応が一貫して丁寧だったことも、書き添えておきたい。
宿にこだわる、ということ
荷物を減らすことは、旅から余計なものを削ぎ落とす作業だ。だが、削ぎ落とした先に何も残らなければ、それはただの我慢になる。
宿にこだわるのは、削った分の余白を、どこかに配分したいからだ。チェックインの瞬間に迎えられる感覚、部屋に一歩入った時の空気、朝食の一皿。そういうものが、身軽な旅の質を最終的に決めている。
海外でも、同じ現象が起きている。2025年のロンドンでは3軒のヒルトン系列を渡り歩き、翌年のカナダ横断でも複数回のアップグレードを経験した。この話はまた別の記事で書きたい。



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