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40歳の誕生日を、原点のロンドンで。9年ぶりのソロ再訪。

夕方の青空に映えるビッグベンと国会議事堂 旅の記録
本記事はプロモーションを含みます。

ロンドンには、9年前に来たことがある。

靴職人を目指していた頃の話だ。海外は初めてで、HISのフリープランでホテルだけ決まっていた。ロンドンを拠点に、ノーザンプトンへ日帰りした。紳士靴の聖地と呼ばれる街のファクトリーを自分の目で見たかった。学びというより、空気を吸いに行った感覚の方が近い。そこでCrockett & Jonesのセミブローグと、ストレートチップを2足買った。セミブローグのCoventryは今もシューツリーを入れて手元にある。

あれから9年。40歳の誕生日を、ロンドンで過ごすと決めた。2023年から続けているバースデートリップ。2025年は迷わなかった。原点に戻る、という感覚があった。スーツケースはない。バッグひとつ。旅の形だけが、あの頃と違う。

クアラルンプール→ロンドン→プラハ→ウィーン→ヴェネツィア→バルセロナ。6都市を渡る旅の記録は、こちらのルート記事にまとめている。この記事はその2章目、ロンドンの3泊について書く。


9年ぶりのロンドン。スーツケースを手放した40代ソロの再訪

青空のもとに立つウォータールー駅のサイン。ロンドン地下鉄のラウンデルと国鉄マークが並ぶ

ヒースロー空港を出た瞬間、青空だった。ロンドンらしくない、と思った。9年前もそうだった。あの滞在も毎日晴れていた。灰色の街というイメージは、いつも裏切られる。

変わったのは自分の方だ。あの頃は何かを持ち帰ろうとしていた。知識でも経験でも、形にして持って帰ることを考えていた。今は違う。街の空気を吸いに来ている。それだけで十分だと知っている。

バッグひとつで動くようになってから、旅の入り口が変わった。入国審査を抜けて、地下鉄に乗り込む。余計な荷物がないから、動きにためらいがない。ロンドンという街のサイズに、すっと入っていける。

2階建てバス

赤いバスが角を曲がる。9年前も同じ景色だった。街は変わっていない。自分が変わった。それを確認するためにここへ来たのだと、地下鉄を降りた瞬間に思った。


ハンプトン・バイ・ヒルトンを拠点に。到着直後の疲労を癒やす「安堵の時間」

ハンプトン(ロンドン)

初日の宿泊はHampton by Hilton London Waterloo。ウォータールー駅から近く、動線が読みやすい。チェックインを済ませて部屋に入った。

My Way特典

チェックインの際、MyWay特典でスナックとドリンクを選んだ。フロントに並んだ選択肢の中から、TyrellsのポテトチップスとOranginaを選んで部屋へ持ち込んだ。それだけのことだが、着いてすぐ買い出しに出るという選択肢が消える。荷物を下ろして、そのままソファに座れる。

この「何もしなくていい時間」が、長距離移動後の体には一番効く。ゴールドステータスの特典を活かすのは、こういう瞬間のためだ。旅に集中できる環境が、静かに整っている。

ハンプトン客室

翌日、5月24日が誕生日だった。夜の予約はRulesに入れてあった。1798年創業、ロンドン最古のレストランとされる店だ。Hampton by Hiltonで朝食を済ませてから、Borough Marketへ散歩に出た。空は曇っていた。到着からずっと晴天が続いていたが、この日初めてロンドンらしい空模様になった。

市場の中でカフェラテを飲んでいると、屋台のひとつで大きな鉄鍋のパエリアが準備されていた。湯気が上がり、海老が色づいていく。食べたいと思ったが、朝食を食べたばかりだった。一度Hamptonへ戻り、シャワーを浴びてチェックアウトを済ませてから、再びBorough Marketへ向かった。

バラガーデン パエリア
パエリア

パエリアを受け取って、立ったまま食べた。海老とムール貝が米に沈んでいる。誕生日の昼を、Borough Marketのパエリアで始めた。その後、London Bridge、タワーブリッジ、Gherkin、Leadenhall Marketまで歩いた。霧の中に消えるThe Shardを路地から見上げた。ロンドンらしい一日だった。

The Shard

夜、Rulesへ向かった。バーガンディの庇に金文字で「EST 1798」と刻まれている。扉を開けると、壁一面に絵画と額縁と鹿の頭が並んでいた。給仕が黒いタキシードで行き交う。時間の感覚が、少しずれる場所だ。

Rules EST 1798と金文字で書かれたバーガンディの庇。London's Oldest Restaurantの文字
Rules店内

牡蠣から始まった。銀の皿に氷を敷いて、レモンが添えられている。メインは兎のカスレ。銅鍋で運ばれてきた。白インゲン豆と煮込まれた兎の脚が、ソースに沈んでいる。
デザートはスティッキートフィープディング。40歳の誕生日の締めくくりに、店がアイスクリームとキャンドルを出してくれた。白い皿にチョコレートソースで「Happy Birthday」と書かれていた。
周りのテーブルの客が、こちらに向かって祝いの言葉をかけてくれた。ひとり旅の誕生日に、見知らぬ人たちから祝われた。ロンドンらしい夜だった。

兎のカスレ
サプライズ

ひとりで、静かにいた。それだけの時間を使うに値する夜だった。


石畳を歩く10年選手の相棒。ダイナイトソールと足元の遊び心

翌朝、The Gantryで朝食を済ませてチェックアウトした。次の宿泊先はThe Westminster London, Curio Collection by Hilton。チェックインまで時間がある。であれば、歩く。

Olympic Parkの遊歩道から、Hackney、運河沿いのナローボートが並ぶ風景を抜けて、サンデーローストの店へ向かった。1時間以上歩いた。日曜の朝のロンドンは静かだった。

散歩道の運河

この旅で履いてきたのは、ジャランスリウァヤのダブルモンク。EDWARDラスト、バーガンディ。10年近く手入れを続けてきた一足だ。ダイナイトソールは、濡れた石畳でも滑らない。1時間以上歩き続けた後も、足との対話が成立している。

ロングホーズはパープル。バーガンディとパープルの組み合わせは、クラシックな靴に遊びを入れるときの定石だ。誰に見せるためでもない。自分が街を歩くときの気分が上がる。それで十分だと思っている。

サンデーローストはラム肉を選んだ。ヨークシャープディングが皿の上にそびえ、グレイビーが肉に染みていた。フォカッチャとバターが先に出てきて、それだけで腹が満ちそうになった。1時間歩いた後の一皿は、格別だった。

サンデーロースト

チェックインを済ませてから、Savile Rowへ歩いた。No.1の真鍮プレートの前に立つ。バーガンディのダブルモンクを履いたまま、英国紳士服の聖地にいる。9年前の自分が見たら、何と言うだろうと思った。

SAVILE ROW

St James’s StreetにはLock & Co.がある。世界最古の帽子屋とされる店だ。9年前、ノーザンテイラーで初めてツイードジャケットを仕立てた際の残布を持ち込んで、ハンチングをオーダーした。その帽子も今も手元にある。この日は店の前を通り過ぎただけだが、いずれまた来ることになると思った。
このジャケットとハンチングについては執筆予定の秋冬の装い編で語る予定だ。

Jermyn StreetでCrockett & Jonesの店の前を通った。9年前、ノーザンプトンのファクトリーで買った靴のメーカーだ。セミブローグのCoventryとストレートチップ、2足買った。ストレートチップは縁あって人の手に渡り、Coventryは今も手元にある。今回は何も買わなかった。ただ、店の前に立った。それだけで十分だった。

クロケット

「モノ」を手に入れる旅から、「余裕」を纏う旅へ

9年前のロンドンで、自分は何を持ち帰っただろう。ノーザンプトンで買った靴、街の空気、初めての海外という感覚。形として残っているものもある。CoventryはもちろんBarbourとCordingsで買ったコートも今も手元にある。ただ、それ以外はほとんど記憶の中にしかない。

今回は何も買うつもりがなかった。10年選手の靴を履いて、バッグひとつで街を歩く。荷物が少ない分、目が開く。路地の奥、カフェの窓、Trafalgar Squareの夕方の光。そういうものが、視野に入ってくる。

トラファルガー広場

Rulesでの誕生日のディナー、日曜の朝に1時間歩いた先のサンデーロースト、Savile RowとJermyn Streetの散歩。どれも、余裕がなければ選ばなかった過ごし方だ。スーツケースを引いていた頃は、移動自体がひとつの労働だった。今は違う。移動が旅の一部になっている。

逆光

ロンドンは9年前と変わっていないようで、見え方が違う。街が変わったのではなく、自分の旅の形が変わった。40歳の誕生日をここで過ごして、それをはっきりと確認した。

ビッグベン

この旅で使ったもの

eSIM 3カ国目の到着で、すでに切り替え済みだった。空港を出た瞬間から地図が動く。それだけで、旅の最初の緊張が一つ消える。
👉 KlookのeSIMで現地通信を整える

クレジットカード プラハの滞在中、現金を使う場面は一度もなかった。ホテルも、レストランも、移動も、カードで完結した。複数枚の使い分けが、海外での安心感をつくる。
👉 12,000円特典付き・Instagram DMで個別案内を受ける

カメラ α6400 + 18-135mm。この旅での主力レンズ。ズームの自由度は高く、様々なシーンに対応できた。広角の物足りなさは、次の旅への宿題になった。

ロンドンを離れる朝、バッグひとつを肩にかけた。9年前は重いスーツケースを引いていた。
身体が軽い。それだけで、旅の色が変わる。St Pancrasからルートンへ向かい、そこからプラハへ飛ぶ。

次の目的地はプラハだ。

Collage 8th horizontal
【ルート公開】40代ソロ、スーツケースなしでアジア・ヨーロッパ6カ国を歩いた。航空券の組み方から装備まで、きままな旅の全記録
スーツケースを持たずアジア・ヨーロッパ6カ国を巡った、40代ソロの周遊ルート。直行便に頼らない航空券のパズル手配術から、装備、ホテル戦略まで旅の全記録。

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